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どうしても言いたかったことは、最後まで口に出せなかった。
なんだか照れくさかった。
けれどいまも言えなかったことをずっと後悔していて、いつかまた、三人で会える日が来たら、そのときこそは必ず伝えようと思う。
*Room No.101
a boy who was brown as a berry*
ミノルは、休みのたびに海に出かけているせいで、真っ黒に日焼けしている少年だった。
元々はサーフィンをしていたらしいのだけど、一度ともだちに誘われて体験ダイビングをしたとたん、海の上から海の中に興味が移ったらしい。最近ではもっぱら、ダイビングに夢中だ。
海に潜って帰ってくるとミノルは、いつも「海の生き物図鑑」を見せながら、海の中のすばらしさを熱く語っていた。
そんなミノルの夢は、水中写真家になること。
海のすばらしさを、もっともっともっと、多くの人に伝えたい、それがミノルの夢だった。
*Room No.102
a peach dreaming the spotright*
モモは、いつも歌っていた。いつも踊っていた。
舞台女優志望のモモは、アルバイトをいくつも掛け持ちしながら、ダンスのレッスンと歌のレッスンに毎日励んでいた。 |
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狭い部屋の中をいっぱいに使って、毎晩モモが見せてくれるショウは、いつでもみんなの心をあたたかく、前向きにしてくれた。
モモのおかげで、舞台なんか見たこともなかった彼らまで、たくさんのミュージカルソングを覚えてしまった。
節約してなんとかひねり出したお金で、何ヶ月かに一度、観劇に行くときのモモは、いつも目を輝かせていた。
*Room No.103
days were not worth a pear, but...*
リオは、取り立てて趣味も特技もなく、これといった夢もなく、したいことも見つからないまま日々を過ごしている、ちょっとした無気力少女だった。
けれど、運命のいたずらか、このふたりに出会ってしまった。
フルーツ・タルト。これは、そんな三人の、日々の物語。
* the apple of one's eyes = 非常に大切なもの、人
* brown as a berry = 日焼けした
* a Peach = かわいい娘、素敵な人
* not worth a pear = 無価値な |
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